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穴から来た男

1. 穴へ向かう男 と シダ食い族

私には一人、変わり者の友人がいる。

その友人の名は真辺、空に開いた穴ばかりを見上げている男だ。

真辺は好き嫌いの激しい男で、中でもシダ食い族を特に嫌っていた。

「奴らはシダを口にするが、結局はそれを吐き出してしまう。そして奴らが本当に食べるのは、シダを好んで食べるボクのような人間だ。そう、つまり彼らは人食い族だ。」

彼の中で、シダ食い族は人食い族らしい。

「そして、その多くは視野が狭く、自分が何を見ているのかもわからない。愚蒙白痴、爬虫類のような愚か者だ。」

シダ食い族を愚か者と語る真辺はきっと、大層な人間だった。

「ボクは違う。だから、あの穴の先を見に行くのだ。」

 

2. 穴から帰ってきた男 と 心的カタストロフ

あれから数時間後、真辺は穴から帰ってきた。

ひどい目に遭ったようで、彼はしばらくの間、死んだように動くことができなかった。

そんな彼を、私よりもシダ食い族が心配していた。

また数時間後、彼は別人のように動き、生きていた。

別人の表情で彼はシダ食い族と話をしていた。

「心的カタストロフだ。」と誰かが言った。

よく見ると、彼はシダ食い族と話をしていなかった。

 

3. 別人 と 夢

真辺のような別人はいつしか眠り続けるようになった。

見舞いに行ったとき、眠りながら彼は語った。

「シダ食い族の宝が壊されてしまった。奴の窓を割るためのつぶてを探さなくては…。」

やはり、別人の言葉だ。

帰る途中、空の穴から目が覚めるほどに冷たい空気が流れてきた。

見上げると、穴の中でシダの葉が光っていた。

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